「腰が痛い」と一口に言っても、その原因は人それぞれ異なります。腰痛には大きく分けて5つのタイプがあり、タイプを正しく把握しないまま対処しても改善しないどころか悪化することもあります。
理学療法士として10年以上、多くの腰痛患者さんと向き合ってきた私が、腰痛の種類と原因をわかりやすく解説します。
あなたの腰痛はこの5タイプのどれ?
腰痛を大きく分けると「筋肉・筋膜性」「椎間板性」「神経根性」「姿勢性」「内臓・その他」の5タイプになります。それぞれ痛み方や誘発動作が異なるため、自分のタイプを知ることが改善への第一歩です。
こんな症状はありませんか?
- 長時間座っていると腰が重くなる
- 朝起きたときに腰がこわばっている
- 前に屈むと腰から脚にかけて痛みが走る
- 腰を反らすと痛みが強くなる
- 安静にしていても腰がズキズキ痛む
腰痛の5つのタイプと原因
タイプ① 筋肉・筋膜性腰痛(最も多い)
腰回りの筋肉(脊柱起立筋・多裂筋・腰方形筋など)の疲労・緊張・微細損傷が原因です。重いものを持ったとき、急な動作の後に起こる「ぎっくり腰」もこのタイプです。
特徴: 動かすと痛む・安静で楽になる・押すと痛い部位が明確
タイプ② 椎間板性腰痛
椎骨の間にある椎間板が傷ついたり、飛び出した(ヘルニア)状態です。髄核が神経を圧迫すると、お尻から脚にかけてしびれや痛みが走ります(坐骨神経痛)。
特徴: 前屈みで悪化・咳やくしゃみで痛みが増す・足のしびれを伴う
タイプ③ 神経根性腰痛(脊柱管狭窄症など)
加齢による骨の変形や靭帯の肥厚で脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態です。歩くと脚が痛くなり、少し前かがみになると楽になる「間欠性跛行」が特徴です。
特徴: 歩行中に脚が痛くなる・前かがみで楽になる・50代以上に多い
タイプ④ 姿勢性腰痛
反り腰・猫背・骨盤の傾きなど、長年の姿勢の歪みが積み重なって腰に負担がかかるタイプです。デスクワーカーや育児中の方に多く、慢性化しやすいのが特徴です。
特徴: 一定の姿勢を続けると悪化・特定の動作では痛みが出にくい・長期間続く
タイプ⑤ 内臓・その他の原因
腎臓・尿路の疾患、婦人科疾患、骨粗しょう症による圧迫骨折など、腰以外の原因で腰痛が起こることがあります。整体やリハビリで改善しない腰痛の場合、内科的疾患を疑う必要があります。
特徴: 安静にしていても痛む・発熱を伴う・体重減少がある
腰痛タイプ別のセルフケア
筋肉・筋膜性腰痛には温熱ケア
急性期(受傷後48時間以内)は冷却、それ以降は温めることで血流を促し筋肉の緊張を緩めます。入浴やホットタオルを活用しましょう。
椎間板・神経根性腰痛は無理な動作を避ける
急性期は安静を優先し、痛みが出る動作(前屈み・重いものを持つなど)を避けます。症状が落ち着いてきたら体幹のインナーマッスルを鍛えて椎間板への負担を減らします。
姿勢性腰痛は日常の姿勢を見直す
長時間の同一姿勢を避け、1〜2時間ごとに立ち上がって動くことが大切です。骨盤を立てた座り姿勢を意識することで腰への負担が大幅に減ります。
来院を検討すべきサイン
- 脚・足先にしびれや脱力がある
- 排尿・排便のコントロールが難しくなった
- 安静にしていても強い痛みがある
- 発熱・体重減少を伴う
- 2〜3週間のセルフケアで改善しない
特にしびれ・脱力・排尿障害は緊急サインです。すぐに医療機関を受診してください。
参考文献
- 日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン 2019」
- 厚生労働省「国民生活基礎調査(2019年)」
- van Tulder MW, et al. European guidelines for the management of chronic nonspecific low back pain. Eur Spine J. 2006